低分子化合物によるアルツハイマー病治療薬「GT863の開発」
認知症と治療薬
認知症の定義は簡単にいいますと「日常生活に支障をきたすほど認知機能が障害されている状態」をいいます。日常生活に支障がない程度の単なるボケや物忘れは認知症とはいいません。
認知症患者は462万人でその予備軍は400万人といわれています。世界では4000万に上る数です。
認知症にはアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、タウオパチーによる認知機能障害があります。これらの内でアルツハマー病の患者が70%といわれています。認知症の特徴は進行すると人格の崩壊、家族を認識できない、夜間徘徊、時に暴力を振るうなど社会的な問題を多く含んでいます。
それに対してアルツハイマー病の治療薬はドネペジル(商品名アリセプト)、イクセロン(商品名リバスチグミン)、ガランタミン(商品名レミニール)そしてメマンチン(商品名メマリー)があります。しかし、これらの4つの治療薬は対症療法であるため症状の進行を遅らせることはできますが進行を止めることはできません。
アルツハイマー病の原因はアミロイドβの凝集塊とタウタンパクの凝集塊といわれています。このふたつのタンパクの生成を抑えることができれば根本治療薬になる可能性があります。
私たちのグループはアミロイドβとタウタンパクのいずれも生成を抑制する物質を発見しました。それがGT863です。GT863は2018年にフェーズ1を計画しています。いままさに夢の新薬開発の第一歩を踏み出したところです。